文化財をテーマとしたおはなし会として、
第1部を
国立民族学博物館 日髙真吾先生
『博物館で文化財を保存する』
第2部は
株式会社 文化財保存 吉岡宏先生
『装こう分野の文化財修理について』
と、文化財に携る2名の先生に、それぞれの専門とされているお話しを聞かせてもらいました。
「博物館で文化財を保存する」
日髙先生のおはなしを聞き、今まで私が知っている(と思っていた)『博物館』『文化財』。
いかに狭い定義でしか捉えていなかったのかと、気づかされました。
タイトルから想像していた内容より、遥かに広い内容でのおはなしで、
博物館論から地域文化、そこにある世界情勢や人間くさい人間心理。
そして、後半には、国立民族博物館(みんぱく)での実際の保存の取り組みと技術を紹介してくださいました。
広い世界と歴史の高い視点から、ぐぐっと日本、郷土と視点が自分に近くなり、さらにぐぐぐっと知らなかったら見えない現場の視点へと近づく。
時間や世界を旅するような楽しさでした。
また、博物館の役割の1つとして、『人が人を知る』装置というものがあると。
人が人を知る。それは、自分と他者の違いから起こる争いが減ることにも繋がります。
そして、郷土博物館というものは、地域の貴重な文化財を保存するだけではなく、実践的な教育普及をもその目指すところとしている。
であれば、「今日、私が話をして、それを聞きに人が集まる場となった、この澤井家住宅は一つの博物館だと言うこともできる。」とおっしゃった先生の言葉がとても印象的でした。
「装こう分野の文化財修理について」
奈良の国立博物館にその修理所を構えている株式会社文化財保存の吉岡先生は、文化財の中でも『装こう』と呼ばれる、掛け軸、屏風、襖、絵画などの文化財修理についてのお話をしてくださいました。
修復ではなく修理だというのは、元の状態に復元するのでは無く、そこに何も足さず、今ある状態、オリジナルを大切にして修理するからだそうです。
実際の修理の様子や、そこに使われている糊や絹や紙についての話を聞くと、今まで表面しか見えていなかったものの奥にまで目が行くようになりました。
また、文化財修理で大切にされていることとして、調査と記録というものがあり、それは未来の人に技術を伝えるという目的を果たしているということでした。
そして、今回修理して終わりではなく、今修理したものは、前回50から100年前に修理したものであることが多く、次はまた50から100年後に修理することを前提に可逆性のある素材や手法を使うことも大切とされているそうです。
これらの話を聞き、文化財を修理するというのは、聞かないとわからない想像もできないところで本当に手間と時間をかけてされているということを知ることができました。
そして、その修理の丁寧さ。かける手間暇は、文化財の価値に関わらず、その万全の修理を行う。
というのが文化財修理の理念だということでした。そして、それなりの値段がかかるということも、具体的に話してくださって、納得でした。
高い理念を持って文化財修理に携わる方からのお話を聞く事ができ、知ると知らないでは同じものでも見え方が全く違うということを実感し、そして知ることで大切なものを守る意識や未来に繋ぐという意識が芽生えるのだろうと感じました。
altism テラコ屋
伊藤 えりか